メルルのアトリエ アーランドの妹錬金術士
○○マスターふと、誰かに見られてると感じ、目を開けると目の前に綺麗な顔をした少女が覗きこんでいた。 悲鳴を上げそうなくらいびっくりしたが、悲鳴は上げず、そのかわり一瞬で目が覚めた。 私を覗きこんでいた少女は、私が目を覚ましたことに気付くと一歩下がった。 「ホムちゃん?」 改めていると知っている顔だった。もちろんゲーム内で。 「あ、私先日からアストリッドお姉さまのところにお世話になっています、ナナです」 「私はホムと申します」 ペコリとホムちゃんは優雅にお辞儀する。 ホムちゃん(くん) アストリッドお姉さまがロロナお姉ちゃんのために錬金術で作ったホムンクルス、いわゆる人工生命体だ。 確か、男の子バージョンもいて、ホムちゃん、ホムくんで言い分けていたと思う。 朝食かな。いい匂いがする。 話を聞くとアストリッドお姉さまより私の世話を言付かったようだ。 あたりを見回してもホムくん(男の子の方)はいない。他の用事かな? 席に着くとホムちゃんが朝食を運んできて一緒に食べる。 今日の朝食はミートパイだ。ちょっとだけシャリオミルクもらった。 「それでは、今日はどのようにいたしますか。プチマスター」 え・・・? 「ぷ、プチ?」 「いえ、深い意味はありません」 いやいやいや、小さいってことでしょ! クーデリアお姉ちゃんじゃないけど、一応年相応としては低いの気にしてるんだけど・・・ ちなみに、後少しで11歳だけど、130cmしかないのだ・・ そういえば、アストリッドお姉さまが「グランドマスター」でしょ。 ロロナお姉ちゃんが「マスター」でしょ。 メルルお姉ちゃんが「ピコマスター」だったはず。 トトリ、もうトトリお姉ちゃんでいいか、トトリお姉ちゃんはなんだろう・・?ナノ? 「今日は午前中に調合で中和剤を作って、午後に冒険者ギルドにいくね」 1日過ごす程度だったら昨日の報酬分で十分足りるのだが、錬金術の勉強には、心もとなさすぎる。 「明日からちょっと採集地まで行こうと思うから、ホムちゃん手伝ってくれる?」 「はい、了解いたしました」 朝食が終わるとさっそく、中和剤作成に取り掛かる。 マジックグラスはもったいないので、昨日採取したうにを使おう。 そうそう、コンテナ(入れておくと劣化を防ぐこともできる)だけど、私の分まで準備してくれたみたいだ。 私はビーカーなどの調合機材を借り受けると、さっそく始める。 後ろでひっそりとホムちゃんが覗いているが、その表情から何も読み取れない。 本当にずっと支援してくれるつもりなのかしら・・? 中和剤は基本的にどんな素材からもできる。 うにを取り出した私は、トンカチや乳鉢でうにを粉砕し、ビーカーに入れていく。 その後、魔力を込めながら慎重に混ぜていく。 次第にうには固形物からゲル状に。ゲル状から液体へと変わっていく。 無心で調合していたため、二人して口数は少なくなくなった。 中和剤を入れるビンをホムちゃんからもらい、小分けしていく。 ちなみにこのような調合品を入れるようなビンは、雑貨屋で定期的に卸してくれるらしい。 「独学とのことでしたが、特に危なくもなく、手順も問題ありませんでした」 そういえば、他人がいるところで初めて調合しているが、問題なかったみたいね。 「よかった。んじゃこれを持ってギルドにいこうね」 「はい。ですが既にお昼の鐘が鳴っているため、先に昼食にしましょう」 あわわっ、熱中してて気づかなかった。 謝る前にホムちゃんから「錬金術を行っていたらよくあることです。今後何度もあるでしょうから、都度謝ることもありません」って言ってた。 みんな似たようなものなんだね。 朝食の残り(ごめんね、小食で・・・)を二人で食べた後、先ほど作った納品用の中和剤をカバンに詰める。 その間ホムちゃんは戸締りをすると外へと出かける。 「あっ、プチマスター?」 「ん?」 ギルドへと向かっている途中にホムちゃんが声をかけてくる。 「ギルドの帰りでいいので武具屋へよりませんか?」 「武具屋?」 「はい、明日から採取で外へ行きますので装備を整えたほうがいいかと」 ふむ、装備がどれくらいするか分からないけど、確かに見ておいた方がいいかもね。 それに、あの人も一度は見ておきたいし。 「そうだね。だったら後で案内をお願いするね」 「はい」 昨日、一昨日よりも落ち着いてきたのか、今日は慌ただしく、町中を見ている。 やっぱりアールズと違って都会だよね・・・ 後で行くであろう武具屋とサンライズ食堂も見つけた。 サンライズ食堂もお金に余裕があったら行ってみたいなー。 ホムちゃんもいろいろ説明してくれて、結構有意義に道中進んでいった。 「こんにちは。クーデリアお姉ちゃん!」 「あら、ナナ、昨日ぶりね」 「今日も納品しに来ました。あっ、そういえば、依頼の受付ってここでいいの?」 「トトリのアトリエ」だとクーデリアお姉ちゃんってランクの査定受付じゃなかったっけ? 「あーいいわよ。私でも。それで今日も中和剤?」 「はい!」 昨日と同様中和剤を渡していく。 でき上がりの品質は昨日と同じBといったところ。 達成できる依頼から、中和剤をひいていき、銀貨150枚の報酬をもらう。 「この後はどうするの?」 「明日から近場の遺跡に採取行きたいので今日はこれから装備を見つくろいに」 「遺跡?」 「はい!フロジストンがほしいので」 「ということは、確か「埋もれた遺跡」ね。確かあそこはウォルフがいたと思うけど、あなたも行くのかしら?」 「はい、グランドマスターからも言付かっていますし、私も同行します」 「そう、まぁ、大丈夫だと思うけど気をつけてね。あとお金に余裕があるなら馬かロバを借りるといいわよ」 採りに行くのが鉱石だしね。子供なので体力がないし、ロバがいるとだいぶ多くの素材を持ち帰られるらしい。 私はクーデリアお姉ちゃんから貸し馬の場所を聞くと、ギルドを後にした。 「おう、いらっしゃい。珍しい客だな」 店に入るとすごく元気のいい男性の声が鳴り響いた。 ギルドからでると一度貸し馬を見に行き、相場を見た後、武具屋に来たのだ。 そう、アーランドシリーズ全作に登場するあの人のフィールドだ。 「はい、今日はプチマスターを案内しに来ました」 「こんにちわ、ロロナお姉ちゃんの弟子になりました、ナナっていいます」 「ほほぅ、あの嬢ちゃんの。俺はハゲル、まぁ見ての通り武器職人さ」 ハゲル・ボールドネス アーランドで「男の武具屋」というお店をやっている。 アーランドシリーズを通して、メンバー全員の武器の作成を依頼できる。 鍛冶を扱うだけあってすごい筋肉だ。マッチョだよ・・・ 名前の通り頭が禿げだが、一応本人は気にしているため言っちゃダメ! 発音も間違っちゃダメだよ! 「ということは、錬金術士か。あの仕事の出番だな」 「あっ、ハゲルさん。その仕事って錬金術使用の武器の作成ですよね。実は私、アールズ王国の出身で約1年半後くらいには戻ってしまうんだけど・・」 それにまだ10歳なのだ。杖を振り回せるとは思えない。生きているいとのおかげでやっとこさ人形も動かせる程度なのだから。 「何、構わないさ。実は俺も同じくらいの時にアールズ王国の復興支援を依頼されててな。嬢ちゃんとも運が良ければ会えるだろうよ」 「そうだったのですね。その時はよろしくお願いいたします」 「おいおいおい、かしこまんなよ。この年で国の復興なんてでかい仕事を任せてもらえるんだ。むしろありがたいくらいだね」 「おっそういえば」と言いながら棚の中を漁りだし、一つの箱を取り出す。 「ロロナの譲ちゃんから変な依頼を受けたと思ったんだがこういうことだったんだな」 「あっ、これって!」 箱から出てきたのは、翠を基調にフリルのついた可愛い服。 たぶん、私用の錬金服だ。 「お代は譲ちゃんからもらってるから、そのまま持って行っていいぞ」 何というか、派手な服だけど錬金術士の仲間入りが本格的にできてきてうれしいかも。 その後、ナイフも覗いてみるが買わずにお店を後にした。 そういえば、このかわいらしい錬金服ってハゲルさんが縫ったのかしら・・・ あの図体でちまちまかわいらしい錬金服を縫っているハゲルさんを想像しかけた私は頭を振り、今考えたことは忘れることにした。 前へ 目次 次へ |