メルルのアトリエ アーランドの妹錬金術士
ある日の日常@5歳の誕生日から2日後、私は大好きなお姉ちゃんとお姉ちゃんの親友に囲まれて両親から誕生日に祝ってもらったのとは別に小さな誕生日会を開いてくれた。 「ナナちゃん、お誕生日おめでとう!」 「ありがとう。メルルお姉ちゃん」 お姉ちゃんの親友・メルルお姉ちゃんが私の頭をなでてくれる。 「ナナ、あなたの好きなクッキー焼いてきたから一緒に食べましょう」 お姉ちゃんがお皿にのせたクッキーと温めたシャリオミルクを人数分持ってきた。 「うわー、お姉ちゃんありがとう!」 歪な形のあるクッキーが多いけど、とても美味しそうな匂いがする。 「あはは、ナナちゃんほんとケイナの焼いたクッキー好きだよね」 「うん!」 半年ほど前、お姉ちゃんが初めてこのクッキーを焼いてから私は虜となっていた。食べるとすごく幸せな気持ちになる。 シャリオミルクにハチミツを一滴たらして、一口すする。甘い! 「それにしてもナナちゃんももう5歳かー、そういえば、大きくなったら何になりたいの」 「んー・・・、あまり考えたこともなかったなー」 半年ほど前から『転生前』である記憶が戻ってから、ここが「メルルのアトリエ」の舞台であるアールズ国の過去だということが分かっていた。 メルルリンス・レーデ・アールズは、アールズ国のお姫様、未来の錬金術士だ。そして、「メルルのアトリエ」主人公。 そして、私の大好きな姉。ケイナ・スウェーヤは、メルルの幼馴染にして親友。 そして私。ナナ・スウェーヤ 私は「メルルのアトリエ」には設定されていなかった、ケイナの妹として今は、存在している。 「あはは、難しく考えなくてもいいんだよ。そだ、だったら何をやってみたい?」 「お姉ちゃんのお手伝い!」 「クスクス」 即答したらお姉ちゃんに笑われた。別に冗談ではなく、本心で言ったんだけどなー 錬金術が存在するメルルのアトリエであるため、もちろん錬金術を学んでも見たかった。 だけど、それはあくまでも2番手であってケイナお姉ちゃんの助けになりたいと思ったのは本当のこと。 半年前に記憶が戻り、記憶情報の波やその記憶によって異世界での孤独を感じてしまったのだ。 情緒不安定になった私を慰めて、癒してくれたのがお姉ちゃんだった。 「そうだメルル、本当にあの服よかったの?」 「いいのいいの。お古だけど、まだ全然着れると思うよ」 誕生日の日にメルルお姉ちゃんからお古の服を数着もらったのだ。王族が着る服なだけに丈夫で保存も良かったのかまだ着れる。 国も豊かではないため、一応長く着るようにしてるみたいだけど、王族なだけに少しは身綺麗にしないといけないようで、捨てずに保管していたみたい。 「ナナちゃんもお洒落したいだろうしね」 「ありがとう♪メルルお姉ちゃん!」 ニコって微笑むとメルルお姉ちゃんがガバッて抱きついてきた。 「あーもう、ほんとナナちゃんかわいいなー。ねぇ、ケイナ。ナナちゃんもらってもいい?」 メルルお姉ちゃんが私の頬に頬ずりしながらそんなこと言ってくる。 「駄目よ、メルル。ナナは私の大事な妹なんですから」 「ぶーぶー」 不貞腐れたこと言ってるが、顔が笑っているから本気ではなかったのでしょう。 「そういえば、ナナちゃん、明日にでも町の古本屋にいってみるの?」 「うん!」 両親から誕生日プレゼントは何がいいのかって聞かれたのだ。 普通なら5歳だし何か気のきいたプレゼントを予め準備してもいいと思うのだけど、そんなこと聞いてきたんだよね。 そこで私は新しい本がほしいって言ったのだ。 最近メルルお姉ちゃんから文字を教わったため、そこそこ読めるようなったのでもう少し難しい本が読んでみたかったのだ。 両親はお姉ちゃんに銀貨200枚渡すと好きな本買うように言ったのだ。 そこで私は新しい本を買うより古い本のほうがたくさん買えるため、お姉ちゃんに古本屋に行きたいと伝えたのだ。 「ナナちゃんは勉強熱心だねー」 「クスクス、メルルは勉強苦手ですものね」 「だってルーフェス厳しいんだもの」 「あら、メルルが逃げ出さなければ勉強にもついていけたのではないの」 「ぶー」 笑いあう二人を見て、一緒に笑った。 メルルお姉ちゃんにもだいぶ元気を分けてもらった気がする。 「ほら、ナナ。もうちょっと丁寧に食べないと」 楽しく談笑していたら、クッキーが口周りについてしまったようだ。 お姉ちゃんが口周りを拭いてくれる。 は、恥ずかしい。 私は、ニヤニヤしているメルルお姉ちゃんを横目に他の話題へと変えた。 「そういえば、ライアスお兄ちゃんは?」 「んー、今日はライアス君見てないなー」 「確か、ライアスさんはルーフェスさんの所に行っていたみたいですけど」 ライアスお兄ちゃんはブラコンだからねー。だいたいルーフェスお兄ちゃんのところにいる。まぁ、ブラコンは人のこと言えないけど・・・ みんなおなかいっぱいになったところを見計らって、お姉ちゃんに袋をもらい残ったクッキーを移していく。 「お姉ちゃん、残ったクッキーをルーフェスお兄ちゃんとライアスお兄ちゃんに持っていくね!」 「あら、だったらお茶を水筒に入れますから、クッキーと一緒に持って行って」 「はーい」 実はここ、メルルお姉ちゃんの部屋、お城の一室だったのです。 ルーフェスお兄ちゃんは若いながら国の運営に携わっている。 たぶん、執務室にいるだろう。 「いってきまーす」 「「いってらっしゃい」」 私は肩掛けの大きなバック(お姉ちゃんとお揃いなの)に水筒とクッキーを入れた袋を詰めていく。 まだ、談笑しているお姉ちゃんたちに一声かけて私は広いお城へと飛び出した。 そういえば、転生直後は転生前の記憶に引っ張られて、大人びていた気もするけど、最近はだいぶ言動が幼くなってる気がする・・・ 目次 次へ |