ゼロの使い魔 ハルケギニア茨道霧中
第二十二話「驚報」




 キュルケの入学準備が彼女が連れてきた侍女らの活躍もあって十分に調い、リシャールも少し安心して経緯を彼女の父ツェルプストー辺境伯ヘクトールに手紙で知らせた頃。
 こちらの暦ではティールの月フレイヤの週となる第三月の第一週、王都トリスタニアから困った知らせが届いた。
 差出人はアンリエッタだったが、いつものように『通信教育』の書類束が添えられて居らず、王太女の印で封蝋された手紙が一通だけ、リシャールの元に送られてきたのだ。筆跡も馴染みあるアンリエッタのもので、王宮の使者からいつものように『カドー・ジェネルー』のシャミナード艦長が受け取ったものと確認も取れているので本物に間違いない。
「また何かあったのかな……?」
 中身を読み進めると、リシャールの宰相就任を推す声が妙に強くなってきており、それを押さえる必要があるのでしばらくの間は見聞役の奏上と『通信教育』は中止、リシャール自身も適当な理由を付けて領地から出ぬようにと記されている。返答不用と書かれたその手紙は、王室関連専用の引き出しに入れて鍵を掛けた。
「確かにこれではなあ……」
 リシャールは、シャミナード艦長がこちらも閣下宛でありますと手渡した手紙の束に目を向けた。アンリエッタの手紙と共に、彼が王都別邸から預かってきたものだ。他にも直接セルフィーユへと届くものもあるが、大方は、褒めちぎられた後に何か一言、欲しい役職や役得などが書き添えられていると決まっている。最近はこちらも徐々に圧力が増えてきているなと、リシャールも感じていた。
 確かに今、自分が王宮をうろついたり、王都別邸にでも滞在することは、宰相就任への後押しになってしまいかねない。まあ、元よりあまり近づきたい場所でもないしここは大人しくしておこうかと、リシャールは対策を相談するためにラ・ヴァリエール公爵への手紙を認めはじめた。

「あら、見聞役はお役御免になってしまったの?
 アンリエッタ様も、楽しみにしていらっしゃった様子だったのに」
「そういうわけでもないんだけどね……」
 リシャールは帰城後、しばらくは領地に篭もりきりになりそうだと、カトレアに報告した。
 城ではあまり仕事の話はしないが、まったく持ち込まないと云うわけでもない。カトレアにも、あるいはキュルケにも、聞かせていい内容ぐらいは口にする。
「リシャールってば、トリスタニアに行くのがいやだったのかしら?
 一度遊びに連れていって貰おうと思ってたのに」
「領地にいる方が気楽なのは間違いない、かなあ……。
 キュルケが遊びに行く分には大丈夫だろうけど、それでもうちの別邸は使えないし、僕やカトレアが王都に行くのはもちろん拙い」
「……そんなに?」
「うん。そんなに、なんだ」
 街中で声を掛けられることはないだろうが、主人ではなくとも貴族の出入りが別邸にあれば、何かあると勘ぐられてしまう。その小さなさざ波が、今はとてもよろしくないのだ。

 内幕はさておいて、他に選択肢がないならばその道を選ぶしかないだろうなとの予感はある。
 王政府に直接関わらず、このまま一地方領主でいられるのなら、それに越したことはなかった。少々忙しかろうとも現在のように献策によって国政を助け、平穏を保つ努力も厭わなかっただろう。
 しかし、今の時点でリシャールの選択肢は狭められ、それでは留まらない状況に追い込まれていた。
 自勢力の中央での立場を強化すべく一度は噂を煽った義父らが、今は押さえに回っていることは知らされている。アンリエッタやマザリーニも早期のリシャールの宰相就任や閣僚入りは悪手と、それに同調していた。
 問題は、本来なら王権として国王の手にあるはずの権利権限が、分散して良いように使われていることだった。アンリエッタも王太女の身分のままでは、強く出ることは出来ない。王太女に定められた権利など、本来は次の王という以外ありはしないのだ。王族として王宮の侍女を新しく登用することは出来ても、近衛隊を増やすことは無理だった。同じく閣僚の人事には強く口を出せないし、貴族院議員の首をすげ替えることも不可能である。
 当のリシャールには領地と家を護るために中央への影響力が必要となっていたが、貴族院主導で軽い神輿に祭り上げられて、アンリエッタ共々晩餐に供された豚の丸焼きの如く食い散らかされては堪らなかった。無事な引退が出来るならば……まあ、それもいいかとさえ思うが、間違ってもありえないと自分でも思っている。
 アンリエッタやマザリーニにしても、真面目に働いて国庫を潤してくれそうな能吏をみすみす潰されるわけにはいかないからこそ、リシャールに気を配っているのだ。彼が家と領地を守るために王権の庇護が必要だというならば、出仕への対価として支払う覚悟だろう。でなければ、ここまで入れ込んだ対応を取るはずもなかった。忠誠と庇護は、本来あるべき主従の姿だとさえ言える。
 だが、未だ彼女の手に王権はない。
 そこでアンリエッタは即位の後押しとなる成果を必要としているのだが、せっかく権利者不在の王権の行使によって甘い汁を吸いやすいこの現状、誰も役得を手放そうとはしない。出る杭となっては打たれてしまうから消極的ではあったが、大勢はアンリエッタの王太女時代を引き延ばす方向へと動いている。マザリーニは国の維持という別の理由で、宰相の持つ権限や影響力を未だ発展途上の彼女に譲渡することが出来なかった。
 それらの状況故に、アンリエッタが即位によって王権に属する全ての権限を手中に収め、王政府を完全に掌握した後でないと、リシャールの出仕は悪手となってしまうのである。

「ねえ、リシャールは……どうしたいの?」
「それはわたしも聞いてみたいわね」
「……とーさまー?」
 妻とでっかい妹と、ついでに不思議そうな愛娘にじっと見つめられ、やれやれとリシャールは肩をすくめた。いい機会かなと、心の内を整理する。やりたい事と、やらなければならない事が、どうにもちぐはぐでいけない。
「正直に言えば……年に幾度かの王都訪問と、後は領地にかまけていられる現状が一番なんだけどね、これはたぶん、もう無理かな。
 宰相就任はともかく、閣僚かその補佐ぐらいは間違いないんじゃないかと、僕も思ってる」
「待って!?
 リシャールが未来のトリステイン宰相って、冗談じゃなかったの?」
「うん、まあ、近未来というか、下手すると近日中というか……」
「近日中!?」
 トリスタニアの王宮であれだけ人の口に上っていれば、隣国の客人には国内の政治事情だから内緒と隠す意味はない。リシャールはアンリエッタらの思惑などは伏せ、状況だけを掻い摘んで話した。
「他の人のことなら、若いのに大したものだなあで済むんだけどね」
「エルネスティーネは『ここは未来のトリステイン宰相様のお城、お嬢様は隣国の王宮も同然と考えてくれぐれもお淑やかにお過ごし下さい』なんて言ってたけど……。
 はあ、単に大人しくしてなさいって意味だと思ってたわ」
 驚きとも呆れとも取れる表情で、キュルケは大きく肩をすくめた。
 エルネスティーネは彼女が実家から連れてきた、ヴァレリーと同年輩の侍女である。今もセルフィーユ家の侍女たちとともに皆の後ろに控え、静かに頷いていた。
「でも、こちら側……僕やラ・ヴァリエール家の望むセルフィーユ伯爵の王政府入りは、アンリエッタ様の女王即位後の話で、今そんな椅子に座らされても困るんだ。
 右も左も知らなくて、後ろ盾がまともに機能していない若造が宰相になったら……キュルケはどうなると思う?」
「……いいように操られるわね、間違いなく」
「そういうこと。
 操りたい人やお飾りにしたい人たちには、今が絶好の機会。
 でも、僕にまともな仕事をさせたい人たちには、後ろ盾がしっかりしてからの方が都合いい。
 王都では、その綱引きをやってるところなんだ」
 僕も引っ張ってるつもりなんだけどなかなかねと付け加え、マリーを受け取って膝に乗せる。彼女は眠いのか、うつらうつらと船を漕いでいた。
「もちろん、僕は現宰相マザリーニ猊下の続投を望んでいる。
 それに、そんな重要な仕事は実績ある人に任せるべきだとか、まだ若造なのでその様な立場は早すぎますと拒否する手もあるんだけど、この出世話から手を引いてしまうと、今度は立場が弱くなりすぎて家を守るのに支障が出るんだよ」
 丁度去年の今頃は、逮捕されて王城西の塔に収監されていただろうか。
 リシャールの中では、あの時自分の解放に尽力してくれた人々への謝礼が、まだ支払い切れていないと言う負い目もある。
「だから、都合のいい時期を待ってるんだけど、当事者が何を領地でのんびりと……ってわけでもなくて、王都に出るとどちらの派閥も刺激することになるから、領外に出られなくなっちゃったってところかな」
「あら?
 でもリシャール、あなたにはラ・ヴァリエール家の後ろ盾があるんじゃないの?
 いくら王宮の貴族でも、それは無視できないと思うんだけど……。
 言い方は悪いけど、我が家と正面から殴り合いの出来る家なんて、トリステインじゃたった一つよ」
「……うん、一対一なら、ね」
 彼女の言葉も間違いではないが、集まった貴族達を烏合の衆と侮る無かれ。王太女とラ・ヴァリエールが共闘してさえこれが精一杯と言うところが、この問題の根深さをよく表している。
「ともかく今は返事待ちかな。
 そうでなくても領内の仕事は山積みだから、しばらくは専念するよ」
「忙しいのは変わらないわけね?」
「……そういうこと」
 はははと乾いた笑いで、リシャールは応じた。
 
 自分で口にした通り、領地に篭もっているからと仕事がなくなるわけではない。良きに計らえ式にしてもいい部分は誰かに任せ、積み重なっている仕事を崩していく。
 庁舎の仕事でも日常業務は官吏達に、城の裏庭にある木々に囲まれた離れの側に池を掘るのはアーシャに、アリアンス島の廃城の追加調査は領空海軍に、王都の市井に流れる自分の噂を拾い集めるのは別邸と商館に、引き続き様子見が必要とラ・ロシェールに残していた派遣部隊は任務完了で帰還途上……。
 感謝祭の準備は自分がほぼ関わらない仕組みが出来上がっていたので、今はゲルマニア行きの護衛付き馬車便について、準備だけでも整えておくかと雛形を作っていた。領地を出られないので交渉に赴くわけにも行かず、現在ある王都往復便を参考に、国境を越えて他国と行き来する場合の問題点などを整理する。
「……今ひとつ乗らないなあ」
 仕事に手が着かないので、いますぐでなくてもいい馬車便の書類を整えていたのだが、それさえもやる気が起こらない。幸いにして至急の書類は片付いているし、翌日以降も忙しい予定はなかった。『通信教育』もしばらくは届かないので、その分の時間が空いてしまったのだ。
「鍛冶場にでも篭もって体を動かそうかな……」
 久しぶりに大物でも鍛えるかと、リシャールは明日回しの書類束に手を着けはじめた。やる気のないところに来て翌日以降の仕事など心より投げ出したいところだったが、まとまった時間を作るためには仕方がないのである。

 数日して届いた義父からの返事には、しばらくは王太女殿下の御言葉に従って本当に領地から動くなと書かれてあり、これはいよいよ詰んだかなと嘆息しつつ、昨日は鍛冶場、今日は書類仕事、明日は視察と領内の諸事を片づけていただけのはずが、目の前まで感謝祭が来てしまった。いつも通りだが、金策に走るようなこともなかったし、去年よりは幾らか余裕もある。
 祭りの前日、前夜祭と称して街に繰り出す人々を横目に帰城したリシャールは、にぎやかに家族から出迎えられていた。
「どうかしら、リシャール?」
「さっき王都から届いたのよ」
「いいんじゃないかな。それらしく見えると思うよ」
 上流の平民に見える程度のお忍び姿で現れたカトレアとキュルケに、うんと頷く。大した出費でもないしと、王都から数着取り寄せて彼女たちに贈ったのだ。基本的に領民の息抜きのためのお祭りであるとの旨は、キュルケにも説明済みである。マリーの分ももちろん用意していたが、彼女は取っ替え引っ替えの着替えに疲れて遅い昼寝とのことだった。
「明日は一日、楽しめるといいね」
 祭りは去年と大同小異の内容だが、クロードとルイズは入学の準備で忙しく、代わりにキュルケが楽しんでくれればいいなと、初年度に比べて倍以上に膨れ上がっている予算に天井を見上げる。人口もそれだけ増えているから当然なのだが、出す方にはそれなりの悩みもついて回った。いや、予算より規模の方が問題だろうか。いっそ来年は二日に分けて、領軍や衛兵隊も半数づつ動員しまおうかとも考えてしまう。これまで警備は置いておらず運営も領民任せで、顔見知り同士が広場に机と椅子を出して酒盛りをしているだけの村々はともかく、ラマディエでは問題が起きた時だけその場に『たまたまいた』兵士の誰かが対応するという、ザルにも程がある方式であった。
 領空海軍は三隻目の『サルセル』を観艦式に出すか否かで少し揉めたが、人員が多少増えていると言っても余裕はないと、結局諦めたようである。去年でさえも『ドラゴン・デュ・テーレ』が放つ祝砲は、無理矢理片舷に集めた口径の揃わない大砲を、数の足りない砲員が事前に走り回って装填し、発射係は一人で数門を担当をするという離れ業に近い運用状況であった。
 街の方は祭りに合わせ、入居者の決まっていない新築の集合住宅を臨時の宿屋としたり、練兵場の片隅に領軍所有の天幕を借りて張っている。酒食はいつも通り多めだが、区切りの合図に使う花火なども増やしたという。蒸留器がなかったので蒸留酒こそ諦めたが、今年は年明けしばらくして備蓄から放出したビール麦から作られた麦酒さえあった。
 明日はまず大聖堂で祈りを済ませ、祭りの主会場として解放されたラマディエの練兵場で開式の宣言と観艦式を行い、その後は『ドラゴン・デュ・テーレ』で領内各村を訪問し……。
 夕方ならば、少しは彼女達の相手もできるかなと、リシャールは予定を立てていた。

 翌日は、いつものように快晴であった。天候特異日などといういつ習ったのかも覚えていないような、懐かしい単語が頭に浮かぶ。
「きゅいー」
「おはよう、アーシャ」
 今日はアーシャにも鞍がつけられ、特別な日であることを示している。
「みんなは準備に時間が掛かっているかな?」
「きゅ」
 しばらくして皆が揃ったのでアーシャで大聖堂へと向かう。城も今日は半休の者がほとんどで、見送りは少なかった。領内ならば実家に帰る者もいるし、ラマディエに繰り出す者も多い。
「あーしゃ! あーしゃ!」
「きゅい?」
「マリーはアーシャが大好きなのね」
「あい!」
 アーシャの大きさが大きさなだけに前はマリーも随分怖がっていたが、いまはもう慣れたものだ。リシャールが乗っていると、自分も乗りたがってアーシャの名を呼びながら両手を伸ばしてくる。
「あんまりお祈りって柄じゃないのよね……」
「じゃあ、キュルケは外で待ってる?」
「そうだなあ、そんなに時間も掛からないしね。
 どっちでもいいよ、キュルケの良いように」
 キュルケももちろん大聖堂へと連れていったが、彼女は聖堂騎士がずらりと居並ぶのを見て大層緊張していた。結局、一緒の方がいいと聖堂の中まで着いてくる。
 祈りを済ませて聞いてみれば……。
「だって、聖堂騎士よ!? 異端審問よ?
 ……リシャールは恐くないの?」
「うーん、僕はあんまり恐くないかな……」
「そうね、みんないい人達よ」
 自分がその騎士隊の隊長であることは内緒にしておいた方がいいかなと、リシャールはカトレアに目配せをした。……せっかくの楽しい日に、わざわざ脅かすことはないだろう。

 観艦式までを無事に終えて、カトレア、マリー、キュルケにジャン・マルクをつけて楽しんでおいでと送り出す。彼女たちは一度、お忍び姿に着替えるため城へと戻るのだ。リシャールには領内訪問という仕事があるので、一日のんびりというわけにもいかない。
 こちらも出航準備が調いましたと伝令に来た水兵に頷き、『ドラゴン・デュ・テーレ』に乗り込もうかという時だった。
「リシャール」
「……公爵様、カリーヌ様!?」
 小さく名を呼ばれて後ろを振り返れば、田舎暮らしの長い老騎士のような風体のラ・ヴァリエール公爵と、同じく公爵夫人にしては随分と簡素で古びたお出かけ着に身を包んだカリーヌ夫人が立っていた。目立たぬようにしているのだろう……とは思うが、残念ながら少々存在感がありすぎて台無しである。
「少しつき合わせて貰うぞ。
 中でも話ぐらいは出来るのだろう?」
「わたくしは娘と孫に会ってきます。
 リシャール、また後でね」
「えっ、あ!?」
「ほら、とっとと歩け。フネが出るぞ」
 公爵は見送るカリーヌに軽く手を挙げると、リシャールの腕を掴んで『ドラゴン・デュ・テーレ』へと乗り込んだ。時間が押しているのも事実かと、フネを預かるラ・ラメー艦長には義父も同行するからと簡単に説明して、お忍びだから騒がぬよう、そして他は予定通りにと頼んでおく。
「今朝方の日の出前、城のある村の外れに着いてな、カリーヌと二人、馬車を乗り継いで会場まで来たのだ。
 ……明け方にはもう、『領主様の荷馬車』が走っていたからな」
「今日は特別ですよ。普段は庁舎の開館に合わせてあるんです。
 お付きの人たちや、竜篭などはどうなされたのですか?」
「竜篭は一度返した。目立たぬよう、夜になってからお主の城まで迎えに来いと命じてある。
 ジェロームは昨日から宿に泊まって、一緒に来た家人の差配をしておるな」
 公爵家筆頭執事が直々に陣頭指揮を執る、万全のお忍びというわけだ。ルイズはどうしているんだろうと少し気になったが、一週間と間を開けずに魔法学院の入学式があるから、同じ新入生でもセルフィーユに暮らすキュルケのようにはいかない。
「それにしても、お忍びでのご訪問など……もしかして、王都で何かありましたか?」
「……うむ」
 髭をしごいて暫く沈思していた公爵は、リシャールの肩に手を置いた。義父は珍しく落ち着きのない様子で、カトレアとの結婚の許可を貰ったときのことをリシャールは思い出していた。
「まあ、今更であるか。
 今日明日の話ではないのだが……リシャールよ」
「はい」
 さあやはり宰相か、それとも閣僚か。その補佐あたりならばまだ助かるが……。
 いっそ新しい役職を提案して自分から売り込み、仕事を限定してしまおうかとさえ考えていた。
 だが公爵の一言は、リシャールの想像の遥か斜め上を行った。

「まだ正式な公表はなされていないが……。
 トリステイン王家はアンリエッタ王太女殿下の御名に於いて、リシャール・ド・セルフィーユの出奔とセルフィーユ『侯国』の建国を許すと決断した」




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