メルルのアトリエ アーランドの妹錬金術士
ぐーるぐる




「こんにちはっ!ティファナさん」
「あら、いらっしゃーい」

 訪れたのは、ロウとティファの雑貨店

 ティファナ・ヒルデブランド

 ここロウとティファの雑貨店の店主だ。
 20歳前後で夫を亡くして未亡人だ。
 確か今は30台後半だよね・・?
 実年齢の割りにすごく若々しくて美人であるため、すごく男性に人気だ。

 今日もお店の端っこにティファナさんのファンがいるようだ。
 仕事はどうした、社会人!

「そういえば、ナナちゃんって、ロロナちゃんのお弟子さんだったの」
「そうですよ」

 まだ一度も教えて頂いていませんが・・!
 ティファナさんとは既にニューズを買いに来た時にお会いしている。

「今日はクロースと糸を見に来たんです」
「あら、そうなの?だったらこっちの品ね」

 そう言ってクロースを見せてくれる。
 錬金術士が作ったクロースで無いため品質が低めだけど、人形を作るのには十分だ。
 私はクロースと糸を一つずつ買い、お金を払う。

 「ティファナさん!こんにちわー!」

 そのときお客さんが入ってきたようだ。
 振り返ってみると見覚えのある人物。

「あ、マスター」
「あっ、ナナちゃんとホムちゃんだ」

 そう、依頼で外に出てたロロナお姉ちゃんだ。

「お帰りなさい♪ロロナお姉ちゃん!」
「ただいまー!ナナちゃん」

 ロロナお姉ちゃんがそのまま私に寄ってくると抱きついてきた。

「今帰ってきたのですか?」
「うん。ギルドでクーちゃんに聞いたら、今頃ここにいるだろうって」

 そういってロロナお姉ちゃんは離れてくれる。
 なんかここに来て抱きつかれる割合が多くなってきた気がする・・

 それからロロナお姉ちゃんはティファナさんからいくつか品を買うと、一緒にアトリエに戻った。




「へぇー。もうフラム作れるようになったんだー」

 最後の仕上げ、固めかけているフラムを見ながらロロナお姉ちゃんがつぶやく。

「うん!ホムちゃんに教えてもらったの。まだ練習は必要だろうけど」
「だったら私も教えてあげる。お、教えるのは上手くないかもしれないけど、フラム作るの上手なんだよー」

 そう言ってロロナお姉ちゃんは、フロジストンと中和剤を取り出す。

「うーん、だけどロロナお姉ちゃん帰ってきたばかりだし、疲れてるんじゃない」
「大丈夫、大丈夫!」

 ちゃぽんっ!
 そう言って二つの材料をアトリエに設置された錬金釜へ放り込んだ。

「えっ・・・?」
「ふふふっーん」

 鼻唄でも歌いそうな上機嫌さだ。

 いや、そんなのはどうでもいい。
 今、素材を錬金釜に入れたけど・・・加工しなくてもいいの?
 いつの間にか、隣に来ていたホムちゃんに聞いてみる。

「はい、あの方法でもできますよ。高度な技術ですが」

 そう説明してくれるけど、うん、意味分かんないし。

「そしてここでー。ぐーるぐーーーる」

 マイペースに調合し始めるロロナお姉ちゃんを見ていたら、錬金釜が光り始めた。
 そして・・・

「できたっーーー!」

 そう言って錬金釜から取り出したのは、確かに『パイ』だった。
 しかも私のパイとは比較にならないほど、美味しそう

「あれ、パイができちゃった。おかしいなーとりあえずフラムパイってことでってあれっ!?ナナちゃん、ど、どうしたの?」

 跪いてしまった私にびっくりしたロロナお姉ちゃんは私の元に駆け寄ってくる。
 いやいや、絶対おかしいって。何で錬金釜に入れただけでできるのさ。
 確かにパイとは何も関係のない素材からパイができるのもかなりびっくりしたけどさ。
 もともとフラムを作ろうとしたのだから、実際にフラムが作れるに違いない。
 と言うか、あれってゲームだけの演出じゃなかったの・・・?

「し、師匠って呼ばせてください・・」
「あ、あれ、私ってもともと師匠だよね!?まだ何も教えてないけど」

 とりあえず仕切り直しと言うことで、既に作ったことのあるヒーリングサルブを作ることになった。
 師匠って呼ばれるより、お姉ちゃんがいいということなので、呼び方も変わっていない。

「そこでぐーるぐるってー!」
「ぐーる・・・ぐる・・・」

 ロロナお姉ちゃんが、隣の錬金釜で実演してくれながら教えてくれている。

「そうそう、ナナちゃん!上手だよ!」

 そ、そうなの・・?全然よくわかってないんだけど。
 そして釜が光りだし、中からヒーリングサルブ(壺つき)が出てきた。

 ・・・できちゃったよ・・・
 なぜ?なんて疑問なんかもっちゃダメなんだろうね。

「プチマスター、どちらも正しい錬金術ですよ」
「で、でもこれって技術じゃ『技術です』いよね・・」

 納得できない部分はあるし、ロロナお姉ちゃんのニュアンスの解読は難解だけど、何とか私にもできた。
 どちらも練習しとこうかな。

「はい、それがいいかと。マスターは細かい機材で細かく分量を量ったりするのは苦手ですが、大衆への説明を行いやすいため、できたほうがいいとホムは思います」
「あーホムちゃん酷い!」
「いえ、マスターの杖捌きは素直にすごいと思います」

 なるほど、アーランド内で後継者ができない理由が見えてきた気がする。
 たぶん、アストリッドお姉さまはどちらもできるんだと思う。ただ他に教えるのが面倒なだけ。
 ロロナお姉ちゃんは錬金釜を使用するのみの錬金術しかできないため、大衆が理解できなかったのだ。まぁ、教え方にも問題があるようだけど。
 トトリお姉ちゃんはと言うとそもそも錬金術との出会いがロロナお姉ちゃんであるため、錬金釜のみなのだろうか。
 パッケージは、フラスコとか持った絵があった気もするけど忘れたなー
 私なんて「あれってゲームだからできるだけで、普通できるわけないじゃん」と思ってしまっていたため、分量を量る錬金術を行っていたのだ。

「プチマスター、大丈夫ですよ。ホムにも分量を量る錬金術はできますので。クラフトもフラムも教えられたと思いますが」
「あ、確かに!」

 よ、よかった。研究はするけど相談できる相手もいないとなるかと思った。
 今度はロロナお姉ちゃんがふくれる。

「もちろんロロナお姉ちゃんにも教えてもらうから大丈夫だよ」
「えへへー、ナナちゃんありがとう!」

 すぐに機嫌は良くなったけどね!








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