ゼロの使い魔 ハルケギニア南船北竜
第七十話「王家の人々」




 園遊会にも終わりが見え始め会場は寂しくなってきたが、リシャールは少しばかり忙しくなっていた。どのようなやりとりがあったのか、アンリエッタ姫とラ・ヴァリエール公爵による相談の結果、アルビオンのウェールズ皇太子付きの案内役に指名されてしまったのだ。もっとも、案内役とは名ばかりの、単なる話し相手ではあった。
 歓待の方はもう一度閉会直前に行う予定であり、準備さえ整えてしまえば問題なかったし、ウェールズ自身も陽気で気さくな人好きのする人物でリシャールの方でも好感を持ったが、やはり忙しいものは忙しい。今日もウェールズの随員に混じって、あちこちへと出向いていた。
「リシャール君、君がブレッティンガム男爵に相談していたフネの件だが、こちらとしても全面的に賛成と陛下が仰っているので、よろしく頼むよ」
「はい、ありがとうございます、殿下」
 気軽に名前を呼ばれるのは名誉であったし、こうして便宜まで図ってもらえるのだからありがたいのだが、彼はアルビオン王国の次期国王でもあるのだ。自国のアンリエッタ姫とは別の意味で、緊張するなという方が無理だった。
「そうそう、これは内密にして欲しいのだが……」
「はい、殿下?」
「私もお忍びで、トリステインの視察に同行する予定なのでね、よろしく頼むよ?」
 にこにことしながら、ウェールズは片目をつむって見せた。

 日暮れ前までウェールズらに従ってあちこちを訪問したリシャールは、至急と銘打った手紙を書き上げると兵士に託した。もちろん、ウェールズのお忍びに関しての準備をセルフィーユへと知らせるためだ。兵士には、王都で伝書フクロウ屋へと駆け込むよう指示をしてある。代え馬なしの伝令ならばここからセルフィーユまで三日弱、王都で伝書フクロウに手紙を託した方が、半日以上は知らせが早く届く計算になるのだ。高くはつくが、そのようなことを気にしている場合ではない。
 だが連絡は出来ても、心配事はまだまだあった。
 リシャールは食事も早々に、ヴァレリー、ジャン・マルクらを集めて頭をつき合わせることにした。
「リシャール様、私もセルフィーユへと戻った方がよろしいでしょうか?」
「うーん、難しいところですね」
「竜篭が手配できればよいのでしょうが、まだ急に捕まえられるほどにはなっておらんでしょうな」
「先日の件もありますし……」
 ヴァレリーがセルフィーユへと戻れば、向こうでの歓待の用意、特にウェールズを宿泊させることになる城の準備についての心配事は減るが、今度は園遊会場でのリシャールの支度などに支障が出る可能性がある。
 綱渡り的な予定になるのは仕方ないかと、リシャールはヴァレリーに無理をして貰うことに決めた。
「この際です、園遊会の終了直後、僕がアーシャで先にセルフィーユへと戻る時、一緒に帰りましょう」
「……大丈夫でしょうか?」
「大丈夫ですよ。
 カトレアでさえ、王都からセルフィーユへと来るのにアーシャに乗ってきたんですから」
 メイジでもない普通の女性は、いきなり竜に乗れと言われれば後込みするものだ。不安げなヴァレリーに、もう一押ししてみる。
「ジャン・マルク殿も一緒に乗るならどうです?」
「私もですか!?」
「三人ならば余裕ですよ」
 アーシャには鞍をつけていないが、四、五人ならば余裕をもって乗ることが出来る。
「心づもりだけは、しておいてくださいね」
 リシャールは念を押して半ば無理に二人を頷かせると、話題を残りの日程についての確認に切り替えた。

 二日後、ガリア王家の出立を見送ったリシャールは、今度はアルビオンの宿営地へとラ・ヴァリエール家の料理長を伴い、選りすぐりの材料を持ち込んで調理場で鍋を振るっていた。
 今日ばかりはウェールズの案内役もお休みである。もっとも、そのウェールズからも、今夜は楽しみにしているからとの一言を貰っていた。
 これは、ソールズベリー伯ら先に歓待を受けた者から話を聞いたアルビオン国王ジェームズ一世の、『美味ならば朕も食してみたい』との発言が巡り巡った結果であった。その要望はトリステイン側の歓待役であるラ・ヴァリエール公爵の元に届けられたが、当然のように、公爵は義理の息子へと丸投げしたのである。
 表向きは調理の監督ということになっているが、実質、料理長との二人三脚だった。自分でも何かしていた方が落ち着くという、あまり誉められたものではない理由が大半を占めるが、リシャールとしてはこの方が良かった。
「料理長、魚料理のソースはこちらに冷ましておきます」
「はい、リシャール様」
「次は……っと、焼き物の準備が先かな」
 内輪の集まりなのか、調理を命じられたのは四人分で、先日よりは数が少ない分気楽なはずなのだが、そうはならない十分な理由があった。
「慣れておられますな、リシャール殿」
「エルバート殿もお毒味役、お疲れさまです」
「なになに、食べるだけで良いのですから、むしろこれも役得というもの。
 国王陛下の御為、しっかり食べ……いや、お毒味させていただきますぞ」
 厨房の片隅のテーブルに陣取って、鍋から取り分けられたスープを嬉しそうに飲むブレッティンガム男爵エルバートには、リシャールのイメージしていたような毒味役の悲壮感などはまったくない。
 もちろん毒を入れるような事をするつもりも、その理由もまったくないが、他国の、それも大国の王へと献ずる正餐の調理を任されているという緊張感は独特のものであった。
 それでも老いた王の為にと、スープはいつもより具材を細かくしたし、食後の酒肴に出す予定のイワシの干物も、小振りなものを選んだりする気遣いは忘れない。
 大凡の料理が出来上がりつ運ばれつして行き、デザートの用意もできた頃、国王陛下がお召しですと、従者が迎えに来た。料理長に確認を取り、残りの支度に問題がないかを確かめ調理場を後にする。
 食材とともに直接調理場へと入ったので、謁見もまだ済ませていなかった。息子であるウェールズが気さくな人柄なので、その父も……とは、言い切れない。こればかりは、実際に会ってみなくてはならない。
 にわか作りの屋敷のこと、調理場から食堂まではすぐであった。リシャールには、もう少し距離のある方が気持ちの整理がつけられて良かったのだが、こればかりは無理があった。
 着いた先で扉を守る騎士に敬礼され、従者によって中へと案内される。
「陛下、セルフィーユ子爵殿が参られました」
「うむ、こちらへ」
「あら、リシャール? どうして!?」
 入室し、跪こうとしたリシャールは、聞き慣れたアンリエッタの声に気勢をそがれた。ちらりと目を向けると、テーブルには他にもマリアンヌ王后の姿もある。
 驚いたには驚いたが、そのような場合ではないかと、自国の二人に小さく黙礼してから、改めて跪く。
「リシャール・ド・セルフィーユ、お召しにより参上いたしました」
「うむ、苦しゅうないぞ。
 そなたも座るがよい」
 すぐさま椅子が運ばれて、アンリエッタの隣に座らされる。王家の四人に混じって座るのは気が引けたが、断るのも不敬だった。
「驚いたわ、リシャール。
 でも、どうしてこちらに?
 リシャールもジェームズ陛下のお招きに預かったの?」
「はい、実は……」
 アンリエッタの問いに言葉を選ぼうとするリシャールだったが、ウェールズがそれを横から遮った。
「父上がね、わがままを仰ったんだよ。
 宿営地で噂の魚料理を食べてみたい、とね」
「うむ、国元を離れてのトリステイン行、味わい尽くさぬ手はないからの」
 と、こちらは当のジェームズ国王である。マリアンヌ王后も、口元に手を当ててくすくすと笑っていた。
「格式を問われない内輪の集まりでもないと、なかなか料理の手配を変えたりすることもできないからね。
 日程も残り少ないし、本日は急遽、リシャール君にご登場願ったというわけなんだよ」
 トリステインの先の国王は、目の前にいるアルビオン国王ジェームズ一世の実弟であったから、確かに親族の気楽な集まりと言えなくもないが、同席するリシャールとしては顔ぶれが豪華すぎて少々異論もある。
「あら、と言うことは、この料理はリシャールが用意を?」
「はい、ありがたいことに、お声をかけていただきました」
「魚料理の話を聞いてすぐ、ラ・ヴァリエール公爵に使いを出してな。
 公爵からは、魚料理については義理の息子に一切を仕切らせているので、戻り次第そちらに寄越しますと、返事を貰うた。
 ところが当のセルフィーユ子爵は、ウェールズの案内役として園遊会場を飛び回っておるとのこと、これには弱った。
 風の様に自由奔放な我が息子は、そう広くない園遊会場であってもなかなかにつかまらぬ。
 ……おかげで昨日は、我慢する羽目になったの」
「まあ、ジェームズ様ったら」
 そう言えば昨日は、ウェールズに引っ張り回されてトリステインやガリアのフネだけでなく、小諸国のフリゲートなどにまで足を運んでいた様な気がする。ウェールズは空軍中将でもあると聞かされたが、彼は実に楽しげに各国のフネを見て回っていた。
「しかし、マリアンヌ殿やアンリエッタ姫までが食しておらなんだとは、思いもよらなかったの」
「おや、マリアンヌ様もご存じなかったのですか?」
「ええ、セルフィーユ子爵の登場には驚いたわ」
「そうですわ。
 もう、リシャールが料理のことを教えてくれていたなら、わたくしがジェームズ様とウェールズ様をご招待申し上げることが出来たのに……」
 アンリエッタは少々お冠でリシャールは一瞬首をすくめたが、本気で怒っているわけではないようだった。同席のジェームズらは笑顔であり、尖った雰囲気もないかと胸をなで下ろす。
 しかし、アンリエッタの言にも一理あった。客人を招待するにあたって、奇をてらったり趣向を凝らしたりすることは、相手を楽しませようとする純粋な心遣いの他にも、主催者の力量を示すのに良いという部分も大きかった。料理などは特に大きな部分を占めるから、アンリエッタとしては不満もあるのだろう。
「まあまあ、アンリエッタ。
 しかしリシャール君、自国の王家には献上していなかったのかい?」
「ふむ、確かに期待通り美味であったな。
 トリステインの新しい名物と聞いておったし、実際、朕も食したことのないものであったが……。
 セルフィーユ子爵」
「はい、陛下?」
「普通は自領の名産品ならば、名を売るなり味を誇るなりすべきところであろう?
 ……隠して切り札にしておったと言うわけでもなさそうであるし、今ひとつ朕には判じかねる。
 これは如何なる仕儀にあろうか、セルフィーユ子爵よ?」
 人の上に立つ者故の疑問であろうか。ジェームズ国王は、圧するでなく笑みを浮かべるでなく、リシャールを見据えた。

 ジェームズはもちろん、リシャールのことを詳しく知るわけではなかった。表情には出さなかったが、何にもまして名誉を求めることが一般的であるはずの貴族のあり方との整合性が見いだせなかったが故、疑問を浮かべたのだ。更には若いと言うよりも幼い、姪と同い年の少年が諸侯を名乗っていることにも不審をおぼえた。この短い時間にリシャールが王家に親しい立場であることをも見抜いていたから、隣国の王としてではなく、亡弟の残された家族に悪い虫が付くのを防ぎたい伯父としての一面もあった。
 穿った見方をすれば、リシャールにその気はなくとも、ラ・ヴァリエール公爵の娘を誑し込み、王家に近づいた若い策士として認識される恐れすらあるのだ。彼が中央の政治に興味を持たず、宮廷内での社交をほぼ最低限の挨拶や伺候のみで済ませていたことが、知らずその身を救っていた。積極的な活動などしようものなら、既得権益に食い込もうとする新興貴族として風当たりは急速に強くなるだろうが、宮廷の法衣貴族にとっては地方の一諸侯の動向など、自らの権益に影響のない限り、茶飲み話以上の存在にはなりえない。
 今のところは、主筋はエルランジェ家ながらも概ねラ・ヴァリエール閥の一諸侯として認識されており、リシャールも領地の経営や王命による街道整備などに追われていたから、中央とのつながりはアンリエッタのわがままに応える程度である。マザリーニの命による代官の逮捕劇にしても、その後の子爵への陞爵も、現状を鑑みれば右も左も判らない新興貴族が体よく厄介を押しつけられたように映っていたから、幸いにして法衣貴族の領分を大きく侵し、敵に回すような要素はなかった。

 リシャールがトリステイン王家にイワシを献上しなかったことは事実だが、特に理由があったわけではなかった。見抜かれそうな嘘を並べ立てるよりはよいかと、正直に答えを返すことに決める。
「陛下、それは私がこの品を献上するに十分な理由を持たず、またその立場に無かったからでございます」
「ふむ?」
「少し長くなりますが、宜しゅうございますか?」
「うむ、聞こう」
 リシャールは、自身が地方諸侯に仕える下級貴族の三男に生まれ、一人立ちをしてイワシの油漬けを作り、やがてラ・ヴァリエール家と縁が出来、祖父らの後押しもあり、男爵として一家を立てたという話を披露した。
「そのまま平民として市井で暮らすことも考えていたぐらいですから、その当時の立場や身分では、王城を訪ねることの方が不敬にあたりました。
 その後爵位を頂戴しましたが、その時には加工場を売り払っていましたので、今度は油漬けがありません。
 もちろん、イワシの油漬けに最も近く詳しい者は自分であるとの自負もございますが、手元にないのでは献上するわけにも参りませぬ。
 今回も、アルビオン王国よりのお客様を歓待せよと義父に命じられ、懇意にしている商人をつかまえて、油漬けを園遊会場に送るようにと手配こそ致しましたが、無論こちらも、私が作ったものでも自領で作られたものでもありませんから、献上するには至らなかったのです」
 おおよその話を知っているアンリエッタはともかく、ウェールズなどは身を乗り出して聞き入っていた。気ままな一人旅など無理な王子として、自由に動き回っていたリシャールの話を、羨ましく思ったのかも知れない。
「ふむ。
 まさか、初代当主とは思わなんだが、概ね得心した。
 じゃが、もう少し、欲を掻いても良いような気もするが?」
 いつぞやギーヴァルシュ侯爵の子息にも同じ様なことを問われたかと、リシャールは思いだしていた。あの時は商人として答えたが、今は諸侯として答える必要があった。
「はい、陛下。
 自分では、欲深いと思っておりますれば。
 ただ、身の丈に合わぬ欲は首を絞めると、自らを戒めております」
 我が身を振り返れば、美人で気だての優しい嫁も得て、もうすぐ子供も産まれる。
 その過程で領地も拝領したし、人任せにはなったが商売も順調だ。家臣を食べさせた上で自分が多少の贅沢をしても、屋台骨が揺らぐようなことはない。
 フネは欲しいが、無理をしなければ借財の返済を考えても、数年の内に手に入れることは出来よう。
 十分に欲深いなと、リシャールは内心で頷いた。
「あら、リシャール」
「姫殿下?」
 くすくすと笑い声が聞こえ、今度はアンリエッタから声が掛かった。
「うふふ、あなたは身の丈が合わなかったら、その身を伸ばすのでしょう?
 カトレア殿との婚姻騒動は、あなたからも聞いたし後からルイズにも色々と教えて貰ったけれど……」
「先日の、ラ・ヴァリエールの皆さんとご一緒したお茶会でも、あなたは随分と熱心に聞いていたわね、アンリエッタ?」
「もちろんですわ、お母様。
 カトレア殿はわたくしにとって、姉とも慕う憧れの女性ですもの」
「なるほどね。
 リシャール君は、そのカトレア嬢を迎えるために無茶をしたわけだ」
 息子らのやりとりをしばし聞き入ってから、ジェームズ王は頷いた。
「ふむ、そなたが知恵と節度を兼ね備えた強欲者であること、このジェームズも理解いたした」
 ジェームズ王は、アルビオン流の諧謔に満ちた言葉をリシャールに投げかけた。
「試みに問うが、そなたの妻は美人か?」
「はい、一目惚れでございました」
 ジェームズはその答えに満足したのか、あるいは、アンリエッタに悪い虫が付くことを牽制しようとしたことが無意味であったことに面白みを覚えたのか、くくくと声を立てずに笑って見せた。
 笑いをおさめた王は、控えの騎士に頷いて王杖を手にリシャールを傍らに招き、跪かせた。
「セルフィーユ子爵よ」
「はい」
「次代のトリステインを担うであろう、そなたの未来に幸多かれ」
 国王不在の親しき隣国に向けての、激励も含まれていたのかも知れない。
 ジェームズ王はリシャールに向けて王杖を重々しく一振りして心地よい風を吹かせると、若者とその未来を言祝いだ。

 翌日、園遊会閉幕の諸々に忙しい義父らや、今回最後の出張料理の準備に走り回る家臣らを余所に、リシャールはアンリエッタに呼び出しを受けていた。
「昨日はご苦労様、リシャール。
 園遊会場での精励を評価し、これからの活躍に期待して、あなたには褒美を授けます」
 アンリエッタから手渡された羊皮紙には、新たに『ラ・ファーベル』家の創設を許すと記されていた。貴族院の承認も取れているのか、紙片には証人として複数の貴族の名が書き連ねてある。
「その名前は、お母様と相談して幾つもの候補から選びましたのよ」
 ファーベルとは、鍛冶屋や細工師、職人といった意味合いで、確かにリシャールには似合いの名であろう。

 乱発が許されるほどではないが、勲爵士の家系を一つ作り出すこと、それ自体は王家にとって難しいことではない。それこそ、貴族院が取りまとめる諸侯らの次男三男を家長とする分家の申請は、年間十数家にも及ぶ。申請する本家が爵位を持つ上流の貴族であれば、勲爵士家ならば余程の問題がない限りそのまま認められることが通例であった。
 だが、王族から直に名を賜る名誉は、それらとは大きく隔たりがあり、金銭や地位には代え難いものである。望んだからと、得られるものではないのだ。
 また王家にとっても、付随する年金の額とその後の扱いが、賞される本人の代で終わるか、子孫にまで連なるかの違いはあるが、勲章と同じく功績を評価したい場合に使われてきた常套手段でもあった。
 受ける側としては、勲章ならば正装にも佩用出来て年金もつくが、子孫には受け継がせることが出来ない。家名を許されれば勲章よりも多く年金も出る上に、子孫に受け継がせることも可能だが、代わりに従軍やその他の動員や役務についても家名の続く限り負担をせねばならなかった。
 このように、家名の授与は名誉には違いないが、一長一短のあるものでもあった。
 
 リシャールは謹んでそれを受け取った。これはカトレアへのお土産になるだろうかと、考えてみたりもする。
「そうそう、リシャール」
「はい、姫殿下」
「次のお忍びには、その名前でおつき合いして下さいましね?」
 ああ、そういった活躍を主に期待されているのか。
 少しばかり微妙な心持ちで、にっこりと手を振るアンリエッタの元を辞したリシャールだった。 






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